
「自分が何をしているかわかっているのか奥さーん!あなたが人質に取ってる旦那さんには奥さんも子供もいるんだぞー!」
「隊長、被疑者自身が人質の奥さんッス。あと子供は居ないそうッス」
「マジで?子供がいるのは私自身だぞー!あと今日は授業参観日だから早めに切り上げさせてくれー!遅れるとまた一週間口聞いてもらえないんだー!」
「それは言う必要なかったと思うッス」

「バカ旦那と同じ男にこの私の気持ちがわかるか!!旦那もろともお前たちバカ男どもも全員あの世に送ってやるーー!!!」

「隊長、奥さんがパワーを溜め始めたッス。このままじゃ家どころか街を巻き込んで大クレーターが出来上がるッス」
「マジで?それは困るぞ奥さーん!なるべくなら城壁の外に落としてくれー!」

「フンッ!」
「「お?」」

「でぇっ!(ガシッ」
「あ、パンツ」

「よっこいしょ」

「・・・あんたが、Maelonaさん?」
「は!?何勝手に話しかけて来てるわけ!?頃す!!」

「・・・女ばかりの強盗団について、教えてもらいたいんだけど。」
物語が、再び動き出す。
***

―――1時間後、正門前広場。

「落ち着いたかい」
「ええ・・・バカな真似をしたわ。いくらバカでも私のたった一人の夫。半殺しで済ませることにするわ」

一人きりでの調査は随分久しぶり。折角なので、昔のように報告書形式で記録していくことにする。
Mealona の夫、 Gogan は、交易船長 Heinrich Oaken-Hull の話通り、彼と同じくやはり女強盗団の被害者であるらしかった。泥酔していたお陰で記憶が曖昧だった Heinrich と違い、 Maelona の話は具体的で、女強盗団の手口がはっきりとわかった。

酒場で張って獲物を探す彼女たちは、酔っていい気分の男たちを言葉巧みに誘惑し、人気のない場所へ誘い出してから金品を奪い取るらしい。被害は未だに絶えていないようだ。

被害を受けた男たちが被害届を出さないため、具体的な被害者も、決定的な証拠も見つからず、衛兵隊も手をこまねいている状態なのだそうだ。

何故被害届を出さないのか?理由は簡単で、 Maelona の夫 Gogan と同じく被害者が全員妻帯者であり、配偶者への立場や近所への外聞を憚って泣き寝入りしているからだった。

今回被害が露呈したのは、盗まれたのが、無くなれば配偶者が必ず気がつく結婚指輪だったからであり、そしてそれは同時に Maelona の母から受け継いだものであり、また一族に伝わる家宝であった。だからこそ彼女は、夫の不貞はもとより先祖伝来の宝をホイホイ奪われてしまったことにどうしても我慢がならなかったそうだ。

結婚指輪の奪還に対し Maelona が提示した賞金額は 100G 。 Maelona の全財産なのだそうだ。こちらが協力を了承すると、 Maelona は彼女に出来得る限りの協力を約束すると共に、夫の Gogan にも話を聞いてみるよう勧めてきた。後ほど Gogan にも会いに行ってみるとしよう。
「お待ち下さい。この街の住人のおせっかい焼きはわかっていますが、それにしても、あなたはどうしてここまで親身になってくださるのですか?赤の他人からしたら、聞きたい話題ですらないでしょうに」
「それは・・・」

「・・・私も、取り戻したいものがあるから。」
***

Gogan は日中、外にいる妻を恐れて家に鍵をかけて引きこもっているらしい。お陰で夕暮れまで時間をつぶすハメになった。

夜になれば妻が帰宅するので、逆に Gogan は家を出て来る、という寸法である。
そして何故か他人の家の裏庭をうろつく Gogan 。

声をかけて事情を話すと、被害者 Gogan は嫌そうな顔をしながらも話してくれた。
被害にあった時の状況は Maelona と Heinrich の言った通りだった。酒場で一人飲んでいると、えらくべっぴんな Nord と Imperial の女が声をかけてきたそうだ。会話を交わした後、 Gogan は促されるまま女たちについて行き、どことも知れない農場の一軒家に案内されたという。

美女二人を相手にした"お医者さんごっこ"を期待していた Gogan は、彼女らの促すままに服を脱ぐが・・・そこで女たちは豹変したらしい。武器を抜いて脅迫する女たちに身ぐるみ剥がされた Gogan は、解放されたとき裸同然だったそうだ。

据え膳食わぬは男の恥とでも言いたげな Gogan の言い訳はともかくとして、Heinrich からも聞いた手がかりの裏付けとなる証言を得ることが出来た。

二人の男性は共に、あの Flowing Bowl 亭で犯人に出くわしていたのだ。

「・・・ふう。着いた」

「いい店だねマスター。スリリー・・・いや、タミカを。ヴィンテージ物があればそれで頼むよ」
「羽振りがいいですね旦那。この辺りの人じゃないみたいだけど、商人?」
「まあね。宝石の卸売をやってるよ。今回は大口の商談が纏まってね。帝都の妻の元へ帰る前に、久々に財布の中身を気にせず飲めそうだ」

「―――素敵な夜ね、お兄さん」
「ん?僕のことかな?」

「もちろん。私たち、あなたみたいな人を探してたの」
「僕みたいな男を?君たちふたりとも?嬉しいな。何かできることはあるかい?」

「そうね。じゃあ、向こうで一緒に飲みましょ」
「お安い御用さ。君たちも何か飲むかい?」

「アハハハ、そうかそうか。ヒック」

「お兄さんほんとに強いのね。私、ちょっと酔っちゃったみたい」
「えぇ!ほんとぉに!介抱しちゃうよ介抱!ヒック」

「ねぇお兄さん、良かったら私達の家で飲み直さない?お酒に、ディナーに、・・・エッチなサービスも」
「ほ、ほんとぉに!?いくいく、すぐ行くよ。案内して!」

「もぉおばかさん。焦らないの。城壁を出たところにある古い砦の向こうに小さな農場があるの。 Gweden Farm って所よ。そこまで来て。」
「うんわかったわかった!すぐ行く!ヒック!でもその前に、ちょっと小便・・・」

「う~、流石に飲みすぎたな」

「流石に連日はキツかったか・・・昨日のがまだ効いてる」

「Gweden Farm ・・・か。城壁の外を回っていくとなると、意外と遠そうだな」

「しゃあない、夜風で酔い覚ましがてら、歩いて行くとするか」

・・・こんな手でも簡単にかかってくれて良かった。それに、彼女たちは恐らく夜しか街には降りてこないんだろう、昼間の騒ぎに気付いておらず狩場をまだ変えてなかったことも幸運だった。

もう失くしたりしない。
【つづく。次回最終回。】
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やたら幽霊の多い土地なのに武器の材質が鋼鉄なせいで幽霊による騒動が起きてもまるで役に立たないラングリーさんじゃないですか!
かつてラングリーがこれほどまでに人々の耳目を集めたことがあったか。いや、無い。この記事が出来るまでは!
そしてくっころさん、エロいシーンでもなく、普段着なのにおパンツと谷間の二段構えで畳みかけてくるとは汚い!でも保z(ry
しかし昨日の酒が残ってるのにノルド相手にしこたま飲んでボロを出さないというのは、流石狼子さん大酒豪ですね。
でももしかしたら酒場の時だけ瓜二つの彼に変わってるのかもしれませんね?フードを被っていて顔分からないですしw
農場に向かうという事は、ついにミアちゃんとご対面ですか…
今の狼子さんなら心配はしてませんが、それでもバニラだと最後アレですし、どうなるかわからなくて心臓に悪い。
ところでミアちゃん探しに旅立ったはずのズゴック殿は無事に戻ってこれるんでしょうか?w
何れにせよ最終回楽しみにしてます、グドハンティング。